Gypsy Vol.3

(参考文献:白水社「ニューエクスプレス ロマ(ジプシー)語」)

 

はじめに

 ロマ(ジプシー)語で使用しているフォントはArialおよびArial Unicode MSです。どのOfficeにもインストールされているので正常にご覧頂けると思いますが。

 

Te aves baxtalo!(テ アヴェス バフタロ)

 英語のMay you have happiness.に相当します。ロマ語での挨拶の1つです。これは男性に対して使われる表現で、女性に対してはTe aves baxtali!(テ アヴェス バフタリ)と言います。また、複数の相手に対しては、Te aven baxtale!(テ アヴェン バフタレ)と言います。

 もちろん、英語や日本語にもあるような挨拶表現もあります。ここではロマ(ジプシー)語での挨拶表現をご紹介します。

 Good morning.に相当するのはLaćhi texarin!(ラチ テハリン)、Good afternoon.Hello.に相当するのはLaćho dǐves!(ラチョ ディヴェス)、または、Dobroj tut!(ドブロ イトゥト)と言います。複数の相手に対しては、Dobroj tumen!(ドブロイ トゥメン)と言います。

 Good evening.Good night.に相当するのはLaćhi rǎt!(ラチ リャト)と言います。また、Good night.Sov Devleça!(ソヴ デヴレサ)、複数の相手に対してはSoven Devleça!(ソヴェン デヴレサ)とも言います。このSov Devleça!(ソヴ デヴレサ)や、Soven Devleça!(ソヴェン デヴレサ)は直訳するとSleep with the God.に相当します。

 

Fal man miśto!(ファル マン ミシュト)

 英語のNice to meet you.に相当します。

 ここでは時間毎の挨拶以外の挨拶表現をご紹介します。

 まず、How are you?に相当するのがSar san?(サル サン)、複数の相手に対してはSar sen?(サル セン)と言います。また、別の表現も存在し、So maj keres?(ソ マイ ケレス)、複数の相手に対してはSo maj keren?(ソ マイ ケレン)と言います。これに対して、I am fine.と言いたい場合はMiśto!(ミシュト)、I am very good.と言いたい場合はBut miśto!(ブト ミシュト)と言います。

 Thank you.に相当するのがNais tuqe!(ナイス トゥケ)、複数の相手に対してはNais tumenqe!(ナイス トゥメンケ)と言います。また、別の表現も存在し、Palikerav tuqe!(パリケラヴ トゥケ)、複数の相手に対してはPalikerav tumenqe!(パリケラヴ トゥメンケ)と言います。これに対して、You’re welcome.と言いたい場合はNa-i sosqe!(ナイ ソスケ)と言います。

 I am sorry.Excuse me.に相当するのがJertisar man!(イェルティサル マン)、複数の相手に対してはJertisaren man!(イェルティサレン マン)と言います。

 そして、Good bye.に相当する言い方もいくつか存在します。まず、去り行く相手にGo with the God.と言う意味でƷa Devleça!(ヂャ デヴレサ)、複数の相手に対してはƷan Devleça!(ヂャン デヴレサ)と言います。自分が去る場合はStay with the God.と言う意味でAćh Devleça!(アチ デヴレサ)、複数の相手に対してはAćhen Devleça!(アチェン デヴレサ)と言います。

 

Me sem i Isàura.(メ セム イ イサウラ)

 英語のI am Isaura.に相当します。

 ここでのポイントは2つあります。まず、定冠詞です。上記例文ではi(イ)がそれにあたります。ロマ語では定冠詞は多用される傾向があり、一般名詞だけでなく、人名や地名などの固有名詞にも用いられます。定冠詞i(イ)は女性名詞単数形に付く定冠詞で、男性名詞単数形にはo(オ)が付きます。例えば、Parisはロマ語ではo Parizo(オ パリゾ)と言います。また、複数形に付く定冠詞はe(エ)と言います。

 2つ目のポイントは人称代名詞主格と動詞si(スィ)の直説法現在での活用です。

 動詞si(スィ)は英語のbe動詞に相当します。ここでは人称代名詞と一緒に動詞si(スィ)の活用をご紹介します。

 me sem(メ セム=I am)、tu san(トゥ サン=親称形のyou are)、vov, voj si(ヴォヴ, ヴォイ スィ=he, she is)。

 ame sam(アメ サム=we are)、tume sen(トゥメ セン=複数形のyou are、単数扱いで敬称形のyou are)、von si(ヴォン スィ=they are)。

 ロマ語の疑問文は平叙文の語尾をそのまま上げ調子で発音するだけで出来ます。例えば、Are you Hiroshi?と尋ねたい場合は、Tu san o Hirośi?(トゥ サン オ ヒロシ)と言います。

 因みに、Who are you?と言いたい場合は、whoに相当する疑問詞kon(コン)を文頭に置き、Kon san?(コン サン)と言います。

 

O phral na si kathe.(オ プラル ナ スィ カテ)

 英語のMy brother is not here.に相当します。phral(プラル)はbrotherkathe(カテ)はhereに相当します。因みに、sisterphen(ペン)、therekothe(コテ)、wherekaj(カイ)と言います。

 ここでのポイントはna(ナ)です。英語のnonotに相当しますが、ロマ語の否定は、文全体を否定する場合は動詞の直前に、一部を否定する場合は否定したい語句の直前に置かれます。動詞si(スィ)の3人称単数・複数の否定形na si(ナ スィ)は、口語でしばしばna-i(ナイ)、nan-i(ナニ)、nana-i(ナナイ)などになります。

 例えば、I am not the non-Romani.と言いたい場合はMe na sem gaʒo.(メ ナ セム ガヂョ)となりますが、He is not the Romani, but I am.と言いたい場合は、Na vov si rrom, me sem.(ナ ヴォヴ スィ ロム, メ セム)と言い、vov(ヴォヴ)のみを否定する格好になっています。gaʒo(ガヂョ)は男性のnon-Romanirrom(ロム)が男性のRomaniに相当します。因みに女性のnon-Romanigaʒi(ガヂ)、女性のRomanirromni(ロムニ)と言います。

 

Si man jekh phral.(スィ マン イェク プラル)

 英語のI have a brother.に相当します。jekh(イェク)がaoneに相当します。

 ここでのポイントは、所有の表現です。ロマ語には英語のhaveにあたる動詞がありません。代わりに、人称代名詞の対格(「〜を」)と動詞si(スィ)を用いた構文で所有を表現します。所有されるもの(=3人称単数・複数)が主格となり、所有者が対格に置かれます。

 例えば、上記例文では、jekh phral(イェク プラル)が主格であり、man(マン)が1人称単数形の主格me(メ)の対格となります。日本語にすると、「私のところに〜がある」と言った具合になります。

 ここでロマ語での対格を見ておきましょう。man(マン=me)、tut(トゥト=親しいyou)、les, la(レス, ラ=him, her)。amen(アメン=us)、tumen(トゥメン=丁寧なyou、複数形のyou)、len(レン=them)。

 他にも、He has a work.と言いたい場合は、Si les butǐ.(スィ レス ブティ)と言います。「彼のところに仕事がある」と言う意味になり、butǐ(ブティ)がworkに相当します。

 逆に、否定の場合はsi(スィ)をna si(ナ スィ)に変えます。例えば、I don’t have much money.と言いたい場合は、Na si man but love.(ナ スィ マン ブト ロヴェ)と言います。but(ブト)がmuchmanylove(ロヴェ)がmoneyに相当します。

 

Źukerav tut.(ジュケラヴ トゥト)

 英語のI wait for you.に相当します。

 ここでのポイントはźukerav(ジュケラヴ)です。これは動詞źukerel(ジュケレル=wait)の1人称単数形です。

 ロマニ語の動詞は人称と数によって活用します。ロマニ語では、直接法現在3人称単数形を辞書の見出しの形(=不定形)とします。この見出しの形によって、動詞は4つのグループに分けることが出来ます。

 上記のźukerev(ジュケレヴ)の3人称単数形はźukerel(ジュケレル)で、-elで終わる動詞は全体の9割を占めます。

 ここで-el型動詞の活用を、źukerel(ジュケレル)を参考にして見てみましょう。

 źukerav(ジュケラヴ=I wait)、źukeres(ジュケレス=親しいyou wait)、źukerel(ジュケレル=he, she waits)。źukeras(ジュケラス=we wait)、źukeren(ジュケレン=丁寧なyou、複数形のyou wait)、źukeren(ジュケレン=they wait)。

 

Me beśav kathe?(メ ベシャヴ カテ)

 英語のDo I stay here?に相当します。

 ここでのポイントはbeśav(ベシャヴ)です。これは動詞beśel(ベシェル=live, stay)の1人称単数形で、上記のźukerel(ジュケレル=wait)と同じ活用をする-el動詞です。

 では、この動詞beśel(ベシェル)の活用を見ておきましょう。

 beśav(ベシャヴ=I stay)、beśes(ベシェス=親しいyou stay)、beśel(ベシェル=he, she stays)。beśas(ベシャス=we stay)、beśen(ベシェン=丁寧なyou、複数形のyou stay)、beśen(ベシェン=they stay)。

 

Me ʒav kaj fakultèta.(メ チャヴ カイ ファクルテタ)

 英語のI go to the university.に相当します。kaj(カイ)はtoatfakultèta(ファクルテタ)universityに相当します。

 ここのポイントはʒav(チャヴ)です。これは動詞ʒal(チャル=go)の1人称単数形です。この動詞のタイプを-al動詞と言います。

 では、この動詞ʒal(チャル)の活用を見ておきましょう。

 ʒav(チャヴ=I go)、ʒas(チャス=親しいyou go)、ʒal(チャル=he, she goes)。ʒas(チャス=we go)、ʒan(チャン=丁寧なyou、複数形のyou go)、ʒan(チャン=they go)。

 同じ活用をする動詞に、xal(ハル=eat)、patăl(パタャル=believe)などがあります。

 

ロマ語での数字の言い方

 ここではロマ語での数字の言い方のうち、1〜10までをご紹介します。

 jekh(イェク=one)、duj(ドゥイ=two)、trin(トリン=three)、śtar(シュタル=four)、panʒ(パンヂ=five)、śov(ショヴ=six)、efta(エフタ=seven)、oxto(オフト=eight)、enă(エニャ=nine)、deś(デシュ=ten)。

 

Savo si tiro nav?(サヴォ スィ ティロ ナヴ)

 英語のWhat is your name?に相当します。savo(サヴォ)はwhichtiro(ティロ)はyournav(ナヴ)はnameに相当します。丁寧に言う場合には、Savo si tumaro nav?(サヴォ スィ トゥマロ ナヴ)と言います。tumaro(トゥマロ)は丁寧なyourに相当します。

 これに対し、My name is .と言いたい場合は、Mirro nav si .(ミロ ナヴ スィ 〜.)と言います。mirro(ミロ)がmyに相当します。

 

Katar avilăn?(カタル アヴィリャン)

 英語のWhere did you come from?に相当します。katar(カタル)がfromavilăn(アヴィリャン)が動詞avilăs(アヴィリャス=come)の2人称単数直説法完了形です。つまり、親しいyou cameに相当します。

 上記を丁寧に言う場合には、Katar avile?(カタル アヴィレ)と言います。avile(アヴィレ)が動詞avilăs(アヴィリャス=come)の2人称複数直説法完了形で、丁寧なyou cameに相当します。

 これに対し、I came from Japan.と言いたい場合は、Me avilem andar i Źapònia.(メ アヴィレム アンダル イ ジャポニア)と言います。avilem(アヴィレム)が動詞avilăs(アヴィリャス=come)の1人称単数直説法完了形です。andar(アンダル)がfrom insidei Źapònia(イ ジャポニア)がJapanに相当します。

 

Kazom berśa si tut?(カゾム ベルシャ スィ トゥト)

 英語のHow old are you?に相当します。kazom(カゾム)がhow manyberśa(ベルシャ)がyearに相当します。丁寧に言う場合には、Kazom berśa si tumen?(カゾム ベルシャ スィ トゥメン)と言います。

 これに対して、I am 22 years old.と言いたい場合は、Si man biś thaj duj berśa.(スィ マン ビシュ タイ ドゥイ ベルシャ)と言います。biś thaj duj(ビシュ タイ ドゥイ)が22に相当します。