Dialects Vol.17

(参考文献:三省堂「都道府県別全国方言小辞典 石川県」)

 

Vol.17では石川県の方言をご紹介します。

 

◆挨拶表現(金沢)

朝=おはよー・まいどさん

夕方=おしまいさん

別れ=ほんなら

感謝=あんやとー・きのどくな

訪問=まいどさん・おってかいね

 

◆石川の方言

 石川県の方言は北陸方言圏に属し、河北郡以南の加賀方言と羽咋郡以北の能登方言に大きく分かれる。いずれも古くから京都を中心とした近畿方言の影響を受け、アクセントは全般的に京阪式アクセント(能登地方では京阪式のほか一部に東京式、曖昧、無型アクセントも分布)で、語方面でも近畿方言に共通する特徴が多い。

 音韻面では、富山県沿岸部から連続する能登地方にシ・ス、ジ・ズ、チ・ツがそれぞれ同一音になるズーズー弁的特徴があり、イントネーションでも、福井・富山両県と同様、文節末や文末で揺れるような「ゆすり音調」が聞かれる。

 県庁所在地金沢では、かつての城下町として、町屋や茶屋街などを中心に、敬語・挨拶表現等の発達した独自の「金沢ことば」が成立した。

 

◆「〜まっし」は金沢弁の代表

 石川県加賀地方(特に金沢市周辺)では、「飲むまっし」「食べまっし」「来まっし」のように、「〜まっし」がさかんに使われている。

 「まっし」は本来、敬語(尊敬の)助動詞「まさる」の命令形で、五段動詞には終止形、一段動詞には連用形に接続して「まさん、まさった・ました、まさる、まさる、まされや、まっし」のように活用した。共通語化が進み、「まさる」が使われなくなる中で、命令形の「まっし」だけが、共通語の敬語では表現しにくい“優しい命令”を表す言い方として使われ続けている。

 世代が若くなるにつれて、「まっし」は1つの独立した文末形式として、五段動詞でも「飲みまっし」「頑張りまっし」のように連用形接続に変化し、意味も“優しい命令”から“勧誘”に近づきつつある。

 

◆気づかない方言「〜だいめ」

 石川県の人に歌の歌詞を数える時の言い方を尋ねると、当然のように「1だいめ・2だいめ…」と言う答えが返って来る。この「〜だいめ」と言う数え方は、全国でも石川・富山両県だけに使われる。漢字で書けば「〜題目」であろう。他の県では「1番・2番」と言う。

 

◆分野別方言(左は標準語、右は都道府県別方言)

里芋=いものこ、ずいきいも

さつまいも=りゅーきゅーいも

牛=うし

かたつむり=かたつむり

おたまじゃくし=かえるのこ

梅雨=つゆ

かみなり=かみなり

夕立=ゆうだち

恐ろしい=おとろしー

捨てる=ほーる

甘い=あまい

酸っぱい=すい

塩辛い=しおはいー

大きい=でかい

小さい=ちいさい

鬼ごっこ=おにかえ

かくれんぼ=かくれごと

瀬戸物=からつもの

 

◆石川県の特徴的な方言(カッコはその方言が話されている地域。また、カ行半濁点はガ行鼻濁音を表す)

あいそむない=つまらない(加賀)

あいそらしー=かわいらしい(金沢市周辺)

あく゜ちかく=胡座をかく

あく゜るしー=騒がしい(能登)

あせくらしー=忙しい

あたる=貰える

あったらい=もったいない(能登)

あへない=恥ずかしい(能登)

いじくらしー=うっとうしい、うるさい

いちかいもん=頑固者

いちゃけな=かわいらしい

いんき゜らーと=ゆっくりと(加賀)

うまそな=元気そうな(加賀)

おいかー=そうだ(能登)

おいでます=いらっしゃる

おーどな=荒っぽい、大袈裟な、大雑把な

おんぼらーと=のんびりと(加賀)

かさだかな=大袈裟な

かたい=聞き分けのよい(加賀)

かたか゜る=傾く

がっぱんなる=一所懸命になる

きんかんなまなま=雪道が凍ってツルツルになった状態(金沢市周辺)

くどい=塩辛い(加賀)

〜け=〜かい

けんけん=先が尖った状態(加賀)

こそか゜す=くすぐる

ごぼる=雪や泥に足がはまる

じゃまない=大丈夫だ(加賀北部)

しょむない=味がうすい

だちゃかん=だめだ

だやい=病気や疲労で体が辛い

だら=馬鹿

ちきない=病気で体が辛い(能登)

なーん=いいえ(加賀)

はか゜いしー=悔しい(加賀)

へしない=待ちきれない(加賀)

べんこな=賢い、ませた(能登)

ものい=体調が悪く辛い(加賀)

やくちゃもない=めちゃくちゃな、とんでもない

やねこい=汚い、むさ苦しい(能登)

りくつな=よくできた、巧みな