第91回「蘆山寺」
2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」の舞台となったお寺をまだ紹介していなかったことに今更ながら気付く。
京都市上京区。京都御所の東側、寺町通に南面するお寺・蘆山寺。もと市電が走っていた通りだけあり、片側1車線の道路の横に佇む静かな雰囲気のお寺と言っていいだろう。
紫式部の邸宅跡と言われ、「紫式部日記」や「源氏物語」もここで執筆されたのではないかと言われている。
この蘆山寺はもともと平安時代中頃に元三大師良源によって船岡山の南に創建されたと伝えられている。その後、応仁の乱で焼失し、1573年から1593年の間に現在地に移転したと伝わっている。
本堂は1794年、光格天皇によって仙洞御所の一部を移築したものである。本尊は阿弥陀如来坐像、脇侍は観音菩薩と勢至菩薩の阿弥陀三尊形式である。いずれも恵信僧都作と伝わっている。
そして、前述の通り、この蘆山寺は源氏物語の舞台で、紫式部は「平安京東郊の中河の地」、すなわち現在の廬山寺の境内に住んいたと言う。ここはもともと紫式部の曽祖父・藤原兼輔が建てた邸宅であった。
この本堂の南側には「源氏庭」と言われる庭があり、1965年に作庭された。紫式部の邸宅址を記念する顕彰碑が建てられると共に整備され、枯山水庭園で平安期の庭園を再現している。白砂と苔の庭で、源氏物語に出て来る朝顔の花は今の桔梗のことであり、紫式部にちなみ、紫の桔梗が6月末から9月初め頃まで花開く。
更に、このお寺の東側には墓地が広がっているのだが、その奥に豊臣秀吉が京都を大改造した時に築造した御土居の一部が残っている。高さが2mくらいあり、草木に覆われているが石垣も残り、かなり強固なものであったことが窺える。