第6回「三年坂・二年坂」
京阪電鉄清水五条駅から歩いて10分くらい東へ進むと、清水寺への坂(清水坂)を上りながら、その通り沿いに賑やかな昔ながらの参道商店街がある。
その清水坂を上がり、清水寺へ入る直前で左、つまり北の方向へ下りて行く坂がある。三年坂から二年坂へと続いて行き、更に北上を続けると、高台寺や円山公園、八坂神社、知恩院。そして、哲学の道を通って銀閣寺へと続く。
この「三年坂・二年坂」の名前の由来はいろいろあるが、807年(和号で大同“2”年)に坂が整備されたことによると言う説と、産寧坂(三年坂)の下にあるので二寧坂(二年坂)と呼ばれるようになったと言う説がある。
「寧」と言う文字が使われる理由は、清水寺の子安塔の安産信仰から来ているとも、豊臣秀吉の妻・ねね(寧々)が高台寺に居を構えた際、子供の誕生を念じて坂を上がり、清水寺にお参りに行っていたと言うことから来ているとも言われている。
更に、三年坂、二年坂ともに階段の石畳の傾斜が急(本当に急だった)なため、転倒をしないようにと言う意味も込めて、「石段で転ぶと三年坂では3年、二年坂では2年で死ぬ」と言う俗信もあった。石段下の土産店では厄除けの瓢箪が売られているのはそのためだと言う。
それにしても、清水寺に入る直前で北上するために左折しようとその方向を見ると、その景色の何と情緒溢れることか。目の前にはきれいに整備された石段があり、その両側に昔ながらの建物を使ったお店が立ち並ぶ。遠くを見やると八坂の塔が見える。それだけでも京都に来たと言う感慨深さがある。
それから、毎年ゴールデンウィークの頃に、「京都花灯路」が行われる。この界隈の道沿いに行灯を並べて灯す。行灯の温かな光が石畳をほのかに照らす風景は、幻想的で格別な情緒に満ちている。